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漢方AIと肥満漢方外来

[2025.09.24]

先日、医師向けに「漢方AIと肥満漢方外来」をテーマにオンライン講演を行いました。約45分のズーム講演で、多くの先生方と活発に意見交換ができ、私自身にとっても学びの多い時間となりました。

新薬の功罪と漢方薬の注意点

肥満治療ではGLP-1受容体作動薬やマンジャロ(チルゼパチド)が注目されています。

強力に体重を減らせる一方で、食欲を奪い「食べる楽しみ」を失わせるリスクがあり、鬱や骨・筋肉の減少、骨折につながることもあります。

特に新薬は「すでに痩せている人をさらに痩せさせる」傾向があり、中年以降では骨粗しょう症やフレイルのリスクを高める点が問題です。

また講演では、よく使われる防風通聖散の副作用にも触れました。体質に合わないと下痢や食欲不振を起こすだけでなく、まれに肝障害や間質性肺炎など重い副作用を生じることがあり、注意が必要です。

元気を守る肥満漢方外来

肥満漢方外来を続けていると、時に「太っていないが美容目的で痩せたい」という問い合わせをいただくことがあります。

こうした方は漢方外来では基本的にお断りしています。ただし自由診療で痩身薬を使っていた方が「漢方に切り替えたい」と来られるケースは少なくありません。

しかしながら、すでに痩せている人が漢方薬を飲んでも痩せることはありません。

私が講演で最も強調したのは「元気」という視点です。

元気とは「食べて・動いて・笑える力」。

痩せることよりも、元気を支えることこそ肥満漢方外来の本当の目的です。

  • 腸内環境を整えて下痢や便秘を改善し、食物繊維をしっかり摂ること
  • 食事・生活指導をあわせて行うこと
  • 筋肉のポンプを動かす「1日1分のスクワット(6秒×10回)」で血流を改善し、むくみや体重を自然に減らしていくこと

そんな当たり前のことを当たり前に続けることが、元気を取り戻す近道です。

漢方AIの可能性

今回の講演では「漢方AI」についても紹介しました。AIが肥満のタイプを見分け、漢方に不慣れな医師でもその人に合った処方を考える助けになります。

当院ではすでに漢方AIを試験的に導入しており、1か月ほど使った印象として、診療の助けになるだけでなく、患者さん自身がAIと対話する「AI漢方指導」が役立っています。気候や気温に応じて、その方の体質に合わせた食事や生活指導をAIと一緒に毎日行っていただいています。10月から本格導入を予定していますので、ご希望の方は受診時にご相談ください。

終わりに

肥満漢方外来は「体重を減らす」こと以上に、「元気を支え、元気を取り戻す」ことを中心に据えるべきです。漢方、食事、運動、そしてAIの力を組み合わせながら、患者さんが日常を元気に過ごせる医療をこれからも実践していきたいと思います。

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