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胸部外科医は横隔膜を触る

[2022.05.12]

昨日は島根医大外科の先輩、一昨日は高知医大の外科の先輩にご挨拶をした。それぞれに成功された先生方との会話は楽しい。松江での食事でハラミがあった。ハラミは横隔膜。膜というと薄く感じるが、実際には厚い筋肉だ。呼吸でひたすら動き続けるから脂肪はつかない。若いと厚く、歳をとるとペラペラになる。

胸部外科(心臓と肺の外科)で10年、マウスの心肺移植で5年、呼吸器外科で10年を過ごした。心臓外科はタバコなどでボロボロになった血管を切開、吻合し、呼吸器外科はタバコなどでボロボロになった肺を触り、自動縫合器で悪い部分を取り除くのが主な仕事だ。その仕事の中で登場するのが横隔膜。

胸部外科は手術で横隔膜を処理する。10年前に長年の咳、肥満、倦怠感、頭痛、腰痛から漢方にハマり、5年前に寺澤先生から「柴胡剤は横隔膜の緊張を緩める」と学び「横隔神経に支配された筋肉」くらいしか意識のなかった不勉強な胸部外科医は世界が変わった。

横隔膜は交感神経優位である。呼吸による不随意筋であると同時に自分の意思で動かすことができる。暗く沈んだ心も運動をしてハアハアすると晴れるし、深呼吸で緊張が和らぐ。東洋医学では中焦。上半身と下半身の間でふいごのような働きをし、血と水を動かし気を巡らせる。

私は死にたくなったら柴胡加竜骨牡蛎湯を飲む。飲んで数分で「まあいいか」となる。加味帰脾湯、加味逍遙散、補中益気湯、抑肝散など、心の薬は柴胡を含有することが多い。

若くて厚い横隔膜は悲しみで強く痙攣し動けなくなる。老化して薄い横隔膜は失恋で痙攣したりはしない。

悲しい時は突然やってくる。運動習慣のある人は運動を。そんな余裕がなければ「とりあえず柴胡」で眠ってみよう。

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