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GLP-1時代のダイエット医療を考える

[2026.02.04]

近年、「痩せたい」という相談の中で、GLP-1製剤(リベルサス、マンジャロなど)をすでに使っている、あるいは使おうとしている患者さんと出会うことが増えました。

GLP-1は美容医療や自由診療の現場では、「短期間で体重が落ちる薬」として広く知られています。

しかし、診療を続ける中で感じるのは、体重が減ったあとに、心や体のバランスを大きく崩してクリニックに受診される方が少なくないという事実です。

精神状態が不安定だから行くのか、飲むから不安定になるのか

よく聞かれるのが、

「精神状態が不安定だから自費診療に行くのか」

もしくは、

「GLP-1を飲むから精神状態が不安定になるのか」

という点です。

結論から言えば、どちらも起こりえます。そして臨床では、その二つが相互に影響し合い、悪循環を作ってしまうことが少なくありません。

見落とされやすい副作用の問題

GLP-1製剤で特に注意が必要なのが低血糖発作です。動悸、冷汗、手の震え、不安感、めまい、時に意識消失。これらは単なる副作用ではなく、強い身体的恐怖体験として記憶に残ります。

一度でも低血糖発作を経験すると、「また起きるのではないか」という予期不安が生じ、不眠やパニック様症状につながることもあります。外来でお話を聞いていると、低血糖発作を境に、心身の調子が一段階崩れてしまったと感じる方は少なくありません。

また、他にもあまり語られない重要な問題があります。それが低栄養による骨粗しょう症のリスクです。

GLP-1製剤により食事量が大きく減ると、

  • たんぱく質
  • カルシウム
  • ビタミンD

といった骨に必要な栄養素が、知らないうちに不足しがちになります。

特に、

  • 更年期前後の女性
  • もともと小柄・低体重傾向の方
  • 月経異常や無月経の既往がある方

では、「痩せた結果、骨が弱くなる」という現象が起こりえます。体重は減ったとしても、転倒や腰背部痛をきっかけに、骨密度低下が見つかるケースもあります。

いちばんの問題は「悪循環」

実際の診療でよく見る流れは、次のようなものです。

  1. 体型や体重への不安を背景に自由診療へ
  2. GLP-1開始で体重は減少
  3. 食事量低下 → 低血糖・低栄養
  4. 不安・不眠・気分低下が出現
  5. 中止後にリバウンドと自己嫌悪
  6. 心身ともにさらに不安定になる

この段階では、「痩せたい気持ち」と「体を守る必要性」が衝突している状態とも言えます。

漢方治療の立ち位置

当クリニックではダイエットを望む患者さんに漢方治療を行っています。

漢方治療は、体重を急激に落とす治療ではありません。むくみ、便秘、月経前症状、睡眠、自律神経――。体全体のバランスを整えながら、結果として体調や体型が落ち着いていくことを目指します。

  • 低血糖を起こしにくい
  • 低栄養に陥りにくい
  • 中止後の反動が少ない

こうした点は、長期的な健康を考えるうえで大きな利点になると思っています。

最後に

GLP-1製剤がすべて悪いわけではありません。

適切な評価とフォローがあれば、有効な治療となる場合もあります。ただし、低血糖発作や低栄養による骨粗しょう症という「見えにくいリスク」を抱えたまま使われている例があることも、事実です。

体重を減らす前に、

  • きちんと食べられているか
  • ふらつきや動悸はないか
  • 骨や筋肉は守られているか

こうした視点を持つことが、本当の意味での「健康的なダイエット」につながるのではないかと感じています。

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