補うという考え方
外来をしていると「病気ではないけれど、調子が良いとも言えない」。そうした相談を受けることがよくあります。
検査では異常がない。それでも疲れやすい、回復が遅い、集中が続かない。本人にとっては、確かに生活や仕事に影響があります。
こうした状態をどう捉えるか。私は、「悪いところを見つけて直す」ことだけでなく、崩れにくい状態をどう作るかという視点が大切だと感じています。
西洋医学と東洋医学について
私は、西洋医学だけ、あるいは東洋医学だけで、すべてが解決すると考えているわけではありません。Mayo Clinic 留学中、炎症免疫反応における補体の第一人者であるDr. Platt のもとで学ぶ機会がありました。その中で印象に残ったのは、「どちらかが常に主役である必要はない」という考え方でした。
状況によっては、西洋医学が前に出たほうがよい場面もあります。
一方で、体調の揺らぎや回復の遅さ、生活の中で積み重なる不調に対しては、東洋医学の考え方が役に立つことも多い。表面的には「補っている」ように見えても、実際にはどちらかが主となり、もう一方がそれを支えていることもあります。
大切なのは、どちらが主役かを固定することではなく、その時々の立場で、結果としてお互いを助けているかどうかだと思っています。
その後、漢方医学を学び、私は両者を対立させずに考えるようになりました。
未病という視点
はっきりした病気ではないけれど、放っておくと生活の質が下がっていく状態があります。
- 疲れが抜けにくい
- 体調の波が大きい
- 仕事の集中力が落ちている
こうした状態は、多くの場合、検査には表れません。
漢方では、この段階を「未病」と捉え、問題がはっきりする前に整える、という考え方をします。
相補という関係
健康は、一人で完結するものではありません。医師、鍼灸師、運動に関わる人、仕組みを作る人。
それぞれが自分の役割を持ち、状況に応じて前に出たり、支えたりする。誰かが常に中心に立つのではなく、必要に応じて立場が入れ替わる関係のほうが、無理なく続くと感じています。日々の診療を続ける中で、こうした考えを持つようになりました。
それぞれが得意な部分を担当し、足りないところを補う。そのような医療チームを作っていきたいと考えています。
